「三度目の殺人」/日本アカデミー賞受賞
自分の命より大事な誰かを守る尊い気持ちを教えてくれた
ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス
製作国:日本
時間:124分
国内興行収入:約14億6000万円
勝手に評価(10段階)
★★★★★★★★☆☆(8)
➡日本の司法について考えさせられるから観てみて!
※映画は鑑賞した皆様の評価が違うのは当然です。皆様の感性で、お楽しみください。
是枝裕和監督が原案、監督、脚本、編集を手掛けた法廷サスペンス。サスペンスにジャンル分けして良いのか迷う社会派ヒューマンドラマ。
「三度目の殺人」は日本アカデミー賞で最優秀を6部門で受賞しました。
日本の司法に対する痛烈なメッセージであり本当に日本の司法は人権を守れているのかを考える良い機会を与えてくれる映画です。
- 「三度目の殺人」の主な登場人物/キャスト
- 「三度目の殺人」の始まり
- 「三度目の殺人」は是枝裕和監督の目標とメッセージ!~物語に悪者はいない~
- 「三度目の殺人」の一言台詞
- 「三度目の殺人」の補足情報
- 「三度目の殺人」のネタバレ
「三度目の殺人」の主な登場人物/キャスト
重盛朋章/福山雅治
元裁判官の父を持つ遣り手の弁護士で重盛法律事務所の所長。妻と娘とは別居中だが娘思いの良い父親でもある。三隅の起こした殺人事件の弁護を受け持つこととなる。
三隅高司/役所広司
30年前にも殺人事件を起こし、今回は元勤務先の社長を殺害したとして二度目の罪で被告人となっている。足の悪い娘が一人いる。弁護士との接見でも供述内容がコロコロと変わる。
山中咲江/広瀬すず
被害者になった父親の娘。左足に障害がある高校生。大学受験では北海道大学を目指して勉強をしている。
山中美津江/斉藤由貴
被害者の妻であり咲江の母親。三隅に夫の殺害を依頼した疑いがあるとして法廷の証言席に座ることとなる。
摂津大輔/吉田鋼太郎
重盛とは司法修習のときに同期で、重盛法律事務所で一緒に働いている弁護士。当初、三隅の殺人事件を一人で担当していたが重盛の力を借りることとなる。
川島輝/満島真之介
重盛法律事務所のノキ弁(軒先弁護士)。ノキ弁だが三隅弁護団の一人として加わっている。
篠原一葵/市川実日子
三隅の殺人事件の裁判を担当する検察官。正義感が強い性格だが司法の遣り取りには逆らえずにいる。
「三度目の殺人」の始まり
暗がりの多摩川河川敷。三隅は1人の男をスパナで数回殴打し殺害した。そして殺した遺体にガソリンを掛け、マッチに火を付け燃やしてしまう。三隅は燃える遺体を見ながら顔についた返り血を素手で拭う。火の粉が暗闇へと舞い上がっていく。二度目の殺人事件の発生だった。
川から海へと水が流れるように舞台は横浜になる。重盛、摂津、川島の3人の弁護団は三隅が収監されている拘置所へタクシーで向かう。当初は摂津が1人で三隅の弁護を担当するつもりでいたが、三隅との遣り取りに手を焼いてしまい重盛と川島も弁護に加わることになる。そして重盛は初めて三隅と接見する。まるで運命かの様に…。
礼儀正しく、誠実そうな人柄の三隅が減刑を望んでいるようには重盛には見えなかった。
◆予告編(YouTube)
◆インターネットで鑑賞(amazon prime video)
◆ディスクで鑑賞(DVD)
※ディスクではBlu-rayとDVDのスペシャルエディションもあります。
「三度目の殺人」は是枝裕和監督の目標とメッセージ!~物語に悪者はいない~
「三度目の殺人」は第41回日本アカデミー賞で10部門ノミネート・最多6部門で最優秀賞に輝きました。役所広司は助演男優賞で「関ヶ原」とのWノミネートで「三度目の殺人」の方で最優秀賞に輝きました。
弁護士役・福山雅治と容疑者役・役所広司の掛け合いの演技は飽きることはありません。
映画の題名だけで捉えると恐ろしい殺人鬼を描いた法廷サスペンスなのかと想像してしまいます。しかし、そこには人間に持ち合わせていて欲しい優しさや誰かのための自己犠牲などが緻密に描かれていました。
是枝裕和監督の一貫したスタイルである「誰かを悪者として描くことをしない」と言う目標が徹底されていたと思います。それが映画を観た後に何か気持ちが晴れない印象にさえさせてしまいます。そして所々で描かれる十字は、法的には罪になることはないけれど誰でもが生きていれば心の感情として背負うかもしれない見えない十字架が映画のモチーフになっているかの様で考えさせてくれます。法律では裁けない罪として。
「三度目の殺人」は法廷サスペンスと言われています。そこには現在の司法がシステム的に執り行われ本当は事件ごとに事情や人生が有る筈なのに、それは無視されてしまう現状に対して強いメッセージも込められていると思います。本来ならば、やり直さなければいけない裁判を裁判官のスケジュールが優先されてしまう場面などが物語っています。そして正義感が強い筈の検察官までもが同調してしまう。
映画としては裁判員裁判なのに裁判員の発言は殆ど描かれず、一審に不服なら控訴する筈の場面も描かれることなく物語としては終わっているので、司法制度の現状を全て痛烈に批判が出来るかと言えば難しいです。でも実感としては日本の司法は裁かれる側の事情は全く考慮なんてしてくれないと言えます。
殺人を肯定することは出来ないけれど、その犯罪者が抱えている十字架、そして家族に対する想いは充分に理解することが出来る映画です。
「三度目の殺人」の一言台詞
「人間の意志とは関係なく命は選別されてるんじゃないか」
「三度目の殺人」の補足情報
【ロケ地】~昭和の情緒が漂う~
重盛法律事務所のメンバー4人で会食をするシーン。映画ではトングを持って焼肉屋の様に描かれていますが実は創作和食の飲食店。高級感ある会食に向いている落ち着いた雰囲気です。
※上記レストランのメニュープランなど詳細は【一休.com】で御確認ください。
モスバーガー 関内店(MOS BURGER):神奈川県横浜市中区・横浜スタジアム
万引きをしてしまった娘・重盛結花(蒔田彩珠)と会話をするシーンのハンバーガーショップ。2階席からは横浜スタジアムを見ることもできます。店舗は違いますが「海よりも まだ深く」でもモスバーガーは撮影に使われていました。
※上記レストランのメニュープランなど詳細は【Retty】で御確認ください。
重盛と川島が事件の調査状況を打ち合わせしていた喫茶店。昭和の雰囲気が楽しめるコーヒー専門店です。
※上記レストランのメニュープランなど詳細は【Retty】で御確認ください。
丸十ベーカリー ハヤカワ:神奈川県横浜市南区・蒔田商店街
重盛がピーナッツクリームを見ている咲江に話しかけるパン屋。昔ながらのお店ですが現時点では残念ながら閉店しているようです。
SNACK World One:北海道留萌市・留萌駅(るもいえき)
三隅が起こした30年前の殺人事件の調査と三隅の娘を探すために重盛と川島が訪れたスナック。留萌市は札幌から144km離れています。
※上記レストランのメニュープランなど詳細は【Retty】で御確認ください。
重盛法律事務所があるオフィスビル。村林ビルは昭和4年(1929)にモダンな作風を得意とした建築家・関根要太郎の設計で建てられました。現時点では老朽化により解体され残っていません。モダンな建築物として「家政夫のミタゾノ」や「ドS刑事」など数々のテレビドラマ撮影でも使われました。
◆ディスクで鑑賞(Blu-ray)
※ディスクは第1シリーズ放送分です。DVD BOXもあります。
◆ディスクで鑑賞(Blu-ray)
※DVD-BOXもあります。
三隅の裁判を行った裁判所の階段などのシーンは名古屋市役所本庁舎が使われていました。名古屋市役所本庁舎は昭和8年(1933)に昭和天皇即位の記念事業として建築家・平林金吾の設計で建てられました。モダンなビルに名古屋城天守を模した瓦葺屋根を組み込んだ和洋折衷の建築様式です。国の重要文化財にも指定されています。「ステキな金縛り」や「謝罪の王様」など数々の映画、テレビドラマのロケ地として撮影されています。
URL:http://www.city.nagoya.jp/
◆インターネットで鑑賞(amazon prime video)
◆ディスクで鑑賞(Blu-ray)
※ディスクではスペシャル・エディションDVD、スタンダード・エディションのBlu-rayとDVDもあります。
◆インターネットで鑑賞(amazon prime video)
◆ディスクで鑑賞(Blu-ray)
※ディスクではDVDもあります。
咲江が通学する高校。実際の氷取沢(ひとりざわ)高校としては俳優の向井理の母校としても有名です。
URL:https://hitorizawa-h.pen-kanagawa.ed.jp/
【音楽】~是枝裕和監督のラブコール~
ルドヴィコ・エイナウディ( Ludovico Einaudi)
ルドヴィコ・エイナウディはイタリア人作曲家・ピアニスト。ミラノ音楽院でクラシック音楽を学ぶ。少年時代にビートルズの影響も受け、クラシック音楽をベースにポップスやワールドミュージックなどの要素も取り入れた作風のインストルメンタルを作曲している。
祖父のルイージ・エイナウディはイタリア共和国第2代大統領、父のジュリオ・エイナウディは出版社社長という環境で、本人はイタリア政府音楽大使を務めています。
映画やCM曲として多数の楽曲がありフランス映画「最強のふたり」の音楽制作を手掛けた作曲家・ピアニストとしても有名です。「最強のふたり」の“Una Mattina”の動画がありました。
※ストリーミングもあります。
【受賞歴】~役所広司の演技力~
-国内-
第41回日本アカデミー賞(2018年)
作品賞受賞
監督賞受賞:是枝裕和
音楽賞ノミネート:ルドヴィコ・エイナウディ
撮影賞ノミネート
照明賞ノミネート
録音賞ノミネート
編集賞受賞
第60回ブルーリボン賞(2018年)
第74回ベネチア国際映画祭・コンペティション部門への正式出品作品。
※「三度目の殺人」の受賞歴は数が多く全ては載せられないので代表的なものに致しました。
【ファッション】~弁護士は高級バック~
弁護士役として福山雅治が持ち歩いてるバックは、COCOMEISTERのブライドルダレスバッグです。男性なら一つは欲しい高級バックです。
COCOMEISTER(ココマイスター)
大人の贅沢を叶える、ストーリーから生まれるココマイスターの極上革製品。日本製ハイエンド革製品ブランド。
NOLLEY'S(ノーリーズ)
トラディショナルをベースに程よくトレンドをプラスした旬のスタイリングを提案するブランド。
URL:https://www.nolleys.co.jp/
TISSE(ティセ)
レディースフォーマルを通じて「愛と感動で女性を美しく」をコンセプトにしたブランド。
※エンドロールから気になるブランドを選んで掲載をしました。【楽天市場】に公式オンラインショップが有る場合はロゴの下にバナーを貼り、無い場合はロゴの下にブランド・ホームページのURLを記載する様に致しました。
「三度目の殺人」のネタバレ
ネタバレを含みますのでご注意ください。
二度も殺人を犯した三隅には死刑判決が下る。一度目はふるさとである北海道で借金取り2人を殺害し、二度目は元勤務先の社長を神奈川県で殺害したのだから。
では三度目の殺人は誰が犯したのであろうか。三隅が裁判で死刑判決が出る様に、わざと誘導し自らの命を絶つ選択をしたことだろうか。それとも重盛と咲江は三隅の二度目の殺人の動機を知りながら裁判で明かさず三隅に死刑判決が出てしまったことだろうか。どれが三度目の殺人になってしまうのかは映画を観た皆様に委ねられています。
でも一つ言えることとしては重盛も三隅も家族形成に後悔をしている娘を持つ父親でありラストシーンでは同一化していきます。ただ違いがあるとすれば重盛が夢で見た三隅と咲江と一緒に雪に寝転ぶシーンで三隅と咲江は十字に寝転び、重盛は大の字で寝転んでいる。そして2人と1人の間には区別をしたかの様に生き物の足跡によって線引きがされています。三隅と咲江は共犯だろうか。
咲江には父親から性的虐待を受けていた経緯があり、その事実を三隅に伝えます。父親を殺して欲しい気持ちが三隅に伝わり殺人の動機になっていきます。重盛も咲江から、その事実を知らされています。
しかし、裁判で三隅を減刑にしてあげることが出来なかった。だから重盛もラストシーンでは十字路に立ち止まり十字に張られた電線を眺めていたのかも知れません。背負ってしまった十字架の様に。
「三度目の殺人」では、無くしてはいけない人間に対する尊い愛情が描かれています。
そんな感想を言える物語でした。
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原案・監督・脚本・編集:是枝裕和
※全ての画像は上記企業および引用元に帰属しています。
ここまで読んで頂き有難う御座いました。
素敵な映画時間を、お過ごし下さい。