「最強のふたり」INTOUCHABLES(仏語)、UNTOUHABLE(英語)/日本アカデミー賞・最優秀外国作品賞受賞
目の前の相手と素直な気持ちで真っ正面から向き合う大切さを教えてくれる
ジャンル:ヒューマンドラマ、コメディ
製作国:フランス
時間:112分
国内興行収入:16億114万1948円
勝手に評価(10段階)
★★★★★★★★★☆(9)
➡失ってはいけない友情が大切と思えるから観てみて!
※映画は鑑賞した皆様の評価が違うのは当然です。皆様の感性で、お楽しみください。
フランスでは、2011年に公開され観客動員数1位を獲得、ハリウッドでもリメイクされる。日本アカデミー賞・最優秀外国作品賞にも輝き、フランスの名優フランソワ・クリュゼ、コメディアンで俳優オマール・シーのW主演で描く実話に基づいたヒューマンドラマ。
偽りの無い優しさを取り戻したいときに、もう一度、観たくなる映画です。
「最強のふたり」の主な登場人物/キャスト
フィリップ/フランソワ・クリュゼ
頸髄損傷によって車イスでの生活をおくる大富豪。性格は気難しく人を受け入れない面もあるが、周囲の人の気持ちには敏感になっている。趣味はクラシック音楽や絵画などを鑑賞すること。
ドリス/オマール・シー
スラム街に住む黒人青年。フィリップの介護者として雇われる。少し不真面目ではあるが、根は優しく陽気で冗談が好きな性格。相手が誰であろうと分け隔て無く話す。面接で初めて会ったマガリーに恋をする。
マガリー/オドレイ・フルーロ
フィリップの秘書。ペンが持てないフィリップの代筆も務めている。才色兼備でドリスからも口説かれているが、彼女の恋愛観は…。
イヴォンヌ/アンヌ・ル・ニ
フィリップの助手。当初はドリスのことを評価していなかったが、徐々に受け入れていく。規律に厳しく、他人の恋愛話が好き。
マルセル/クロティルド・モレ
フィリップの介護士
エリザ/アルバ・ガイア・クラゲード・ベルージ
フィリップの娘(養子)
バスティアン/トマ・ソリヴェレ
エリザのボーイフレンド
フィリップ邸の庭師
アントニー/グレゴリー・オースターマン
フィリップの友人
エレノア/ドロテ・ブリエール・メリット
フィリップの文通相手
他
「最強のふたり」の始まり
舞台はパリ。フィリップを助手席に載せドリスが運転する車とパトカーとのカーチェイスから始まる。カーチェイスの末に、結局は捕まることになるが、ふたりは何だか遊び感覚だ。
車イス生活を送る大富豪フィリップの邸宅にスラム街に住む黒人青年ドリスが、フィリップ専属介護者の採用面接に訪れる。ドリスは採用される気など全く無く、目的は失業手当が支給されるように面接証明書にサインが欲しかっただけなのだ。しかし、フィリップから見れば他の応募者とドリスは違った。
ドリスは劣悪な家庭環境の中、弟たちの心配もしている。
翌日、ドリスが書類を受け取るために再び訪れるとフィリップから採用が告げられる。
障害者であるフィリップに対して、配慮することなく本音で接するドリス、ふたりは生活も趣味も違うが次第にお互いを受け入れていくようになる。
カーチェイスの末に、ふたりが向かう先は…。
◆予告編(YouTube)
◆インターネットで鑑賞(amazon prime video)
◆ディスクで鑑賞(Blu-ray)
※インターネットでは日本語吹替版、ディスクでは初回限定仕様やDVDもあります。
「最強のふたり」は実話だから説得力がある!~お互いの幸せを支え合える絆~
誰もが、ありのままの自分で目の前の相手と本当の信頼や友情を築きたいと願う瞬間がある筈です。日々のなかで、在り来りで一般的な人間関係の常識に囚われて、相手は職場の上司や学校の先生だから、年齢が上とか下だから、身体障害者だからと理由をつけてしまっていないでしょうか。
この映画は、偽善的では無く、素直に相手のありのままの感情を受け入れ、飾ることの無い気持ちで相手を思いやり、理解していくことの重要性を伝えてくれます。簡単そうで簡単には出来ないことです。
映画はパトカーとのカーチェイスから始まり、あんな危ない運転お互いの信頼関係がないと出来ないと考えてしまいます。
フィリップとドリスが車で外出する際、ドリスは福祉車両の荷台にフィリップを車イスごと載せるのを拒否します。そしてスポーツカーの助手席に座らせます。
フィリップの誕生日会では、ドリスはフィリップが普段は聴かない曲でダンスを披露して心からお祝いをする。
この映画の根底にあるテーマは人間関係における精神的な平等だと感じます。平等じゃ無い人間関係は、いずれ崩壊し上手くいくことはありません。誰もが痛いほど経験し考えてきたことだと思います。
ありのままの自分で、ありのままの相手が、何を考えているのか、何を求めているのか、何に幸せを感じるのか、決して見失ってはいけない優しい気持ちが沢山ある映画でした。
「最強のふたり」の補足情報
【音楽】~映画を盛り上げる2曲+1曲~
オープニングとダンスシーンでの劇中歌はEarth, Wind & Fire(アース・ウィンド・アンド・ファイヤー)が使われています。最初のSeptember(セプテンバー)はフランス映画なのにアメリカの曲なの。これは飽くまでも想像ですが、Septemberの歌詞“Love was changing the minds of pretenders”「愛は見せかけの気持ちを変えていったよね」が正解をくれて、次のBoogie Wonderland(ブギー・ワンダーランド)に繋がっていくのかも知れません。
Earth, Wind & Fire:September
曲名は「9月」なのに歌詞の世界観は12月。
“Now December found the love that we shared in September”「今は12月、私たちが9月に分かち合った愛を見つけたよ」と、ドリスがダウンジャケットを着ていても納得です。
“September”はベストアルバム「ゲッタウェイ~グレイテスト・ヒッツ+2」に収録されています。
“September”は名曲として数々カバーもされています。その中の1つはLittle Glee Monsterの8thシングル「だから、ひとりじゃない」にカップリング・ウィズとして収録されています。8thシングルとしては人気アニメ「僕のヒーローアカデミア」のエンディング曲でした。
※ストリーミングもあります。
スポーツの世界でも“September”は使われています。現役を引退した阿部慎之助選手(読売ジャイアンツ)の登場曲にもなっていました。
Earth, Wind & Fire:Boogie Wonderland
1970~80年代の定番ディスコナンバー。誕生日会でのドリスの選曲は最高でした。Boogie Wonderlandもベストアルバム「ゲッタウェイ~グレイテスト・ヒッツ+2」に収録されています。2曲ともドライブにも最適で盛り上がる名曲です。
Kool & the Gang
もう1曲はドリスの台詞からKool & the Gang(クール・アンド・ザ・ギャング)です。Kool & the Gangの曲は劇中歌としては使われていないので1曲とするのは間違いですが、ヒット曲はCelebration(セレブレーション)です。Earth, Wind & Fireと同時期の定番ディスコナンバーです。
Kool & the Gang のCelebrationは「The Best Of Kool & The Gang 1979-1987」に収録されています。
※ストリーミングもあります。
「最強のふたり」のサウンドトラックには“September”と“Boogie Wonderland”は収録されています。
【受賞歴】~オマール・シーの演技力~
-国内-
第36回日本アカデミー賞(2013年)
外国作品賞受賞
-海外-
第70回ゴールデングローブ賞(2013年)
外国語映画賞ノミネート
第37回セザール賞(2012年)
作品賞ノミネート
監督賞ノミネート:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ
主演男優賞ノミネート:フランソワ・クリュゼ
主演男優賞受賞:オマール・シー
助演女優賞ノミネート:アンヌ・ル・ニ
撮影賞ノミネート
脚本賞ノミネート:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ
編集賞ノミネート
音響賞ノミネート
東京国際映画祭などでもオマール・シーは最優秀男優賞を受賞。
【ハリウッド版】~最強のふたり~
ハリウッド版「最強のふたり」としてはニール・バーガー監督によって「THE UPSIDE 人生の動かし方」という題名で映画化されました。広告は「THE UPSIDE -最強のふたり-」となっています。
フィリップ役をブライアン・クランストン、ドリスがデルと改名されケヴィン・ハートが、そしてイヴォンヌ役としてはニコール・キッドマンが演じました。
配役から想像して脚本が少し変わっているかと思うので2作品を見比べてみるのも楽しいかもしれません。
◆インターネットで鑑賞(amazon prime video)
【実話の映画化】~今でも続く友情~
フィリップ・ポゾ・ディ・ボルゴとアブデル・ヤスミン・セロー(アルジェリア出身だがアフリカ系黒人ではない)がモデル。テレビ番組で作製されたドキュメンタリーを切っ掛けに映画化された。
◆インターネットで鑑賞(amazon prime video)
「最強のふたり」のネタバレ
ネタバレを含みますのでご注意ください。
邦題では「最強のふたり」ですが、フランス語の原題は“INTOUCHABLES”で、発音はアントゥーシャブル、「触れることができない人」との意味。そこにフランスが抱える格差社会があるのだと思います。
フィリップとドリスの人間同士の繋がりには、どちらかが変に意識した哀れみ的な気遣いはなく、本当に相手を思いやる素直な気持ちが友情として成立しています。ドリスはフィリップを相手に雪合戦をしてしまう、耳が性感帯になっているフィリップに女性によるヘッドマッサージを受けさせる、フィリップの車イスを健常者が使っている立ち乗り電動二輪車よりも速く走れるように改造してしまうなど、フィリップが身体障害者になってから経験したこと無い喜びを考えていきます。
フィリップもドリスが描いた絵を販売して売上金として渡したり、ドリスの抱えている家庭環境を考慮して一旦は離れるなど、お互いが相手の事を思いやれる関係性が出来上がっています。
オープニングとエンディングのドライビングシーンが結び付きます。そしてフィリップの恋愛事情までドリスは思いやり、フィリップが文通をしていたエレノアと食事ができるようにセッティングまでしてあげて幸せに導きます。
格差社会なんて「最強のふたり」には無関係だったと物語から伝わってきます。ラストシーンは実話のふたりが現在でも友情が続いていることが紹介されます。
どんな試練が待っていようが、切ってはいけない友情、信頼、愛情が大切だと教えてくれています。それが人間性を豊かにしてくれる事と信じることが出来ます。
そんな感想を言える物語でした。
監督・脚本:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ
©2011 SPLENDIDO QUAD CINEMA – GAUMONT - TF1 FILMS PRODUCTION - TEN FILMS - CHAOCORP
配給:ギャガ
※全ての画像は上記企業および引用元に帰属しています。
ここまで読んで頂き有難う御座いました。
素敵な映画時間を、お過ごし下さい。