「グリーンマイル」THE GREEN MILE/アカデミー賞ノミネート
雨の中の孤独な一羽のスズメの様に人生とは不条理だと教えてくれた
ジャンル:ヒューマンドラマ、ファンタジー
製作国:アメリカ
時間:188分
国内興行収入:約65億円
勝手に評価(10段階)
★★★★★★☆☆☆☆(6)
➡優しい人の不条理な死は流石に考えるから観てみて!
※映画は鑑賞した皆様の評価が違うのは当然です。皆様の感性で、お楽しみください。
原作は「スタンド・バイ・ミー」や「ショーシャンクの空に」のスティーブン・キング。監督は「ショーシャンクの空に」や「ミスト」のフランク・ダラボン。
鑑賞される方によって好き嫌いが分かれる物語かもしれません。その人が持つ優しさは人々には伝わらない不条理を描き、非常に重いテーマの3時間以上に及ぶ長編映画です。
「グリーンマイル」の主な登場人物/キャスト
ポール・エッジコム/トム・ハンクス、ダブス・グリア
コールド・マウンテン刑務所E棟の看守主任。死刑囚のジョン・コーフィに患っていた尿路感染症を治してもらってから彼の人柄を見て冤罪ではないかと考えるようになる。映画の設定としては老人ホームで長寿のポールが回想している出来事として描かれる。
ジョン・コーフィ/マイケル・クラーク・ダンカン
幼い姉妹を強姦殺害した罪で死刑囚としてコールド・マウンテン刑務所に収監された黒人の大男。その風貌とは違い暗闇を恐れ、人の感情を読み取る能力や病気を治す能力をもっている。
ブルータス・ハウエル/デビッド・モース
ポールの同僚でコールド・マウンテン刑務所E棟の看守副主任。職務に忠実で正義感が強い性格の持ち主。
パーシー・ウェットモア/ダグ・ハッチソン
州知事にコネがあるのをいいことに死刑囚に対しても傍若無人な振る舞いをする新人看守。その態度に同僚からも評判が悪い。
エデュアール・ドラクロア/マイケル・ジェッター
通称「デル」と呼ばれるフランス人の死刑囚。ミスター・ジングルスと名付けたネズミを飼育している。パーシーと相性が悪い彼の末路は…。
ウィリアム・ウォートン/サム・ロックウェル
多数の人を殺害した凶悪な死刑囚。コールド・マウンテン刑務所でも多くの問題行動を引き起こす。
ディーン・スタントン/バリー・ペッパー
若手の看守
ジャン・エッジコム/ボニー・ハント
ポールの妻
ハル・ムーアズ/ジェームズ・クロムウェル
コールド・マウンテン刑務所の所長
メリンダ・ムーアズ/パトリシア・クラークソン
ハルの妻
バート・ハマースミス/ゲイリー・シニーズ
ジョン・コーフィの弁護士
他
「グリーンマイル」の始まり
老人ホームで暮らすポールは悪夢で目を覚ます。彼は長い散歩をすることを日課としていた。
老人たちが集まりテレビを見ている。テレビに映画「トップ・ハット」が映し出された瞬間、ポールは気分が悪くなり仲の良い友達に付き添われてテレビから離れる。その後、ふたりで紅茶を飲みながら彼は刑務所の看守だった頃の出来事を話し始める。
時代は世界大恐慌の1935年、コールド・マウンテン刑務所に幼い姉妹を強姦殺人した罪でジョン・コーフィ死刑囚が収監される。彼は誰もが驚く巨漢の黒人だった。しかし、その見た目とは裏腹に、彼は大人しく弱々しい雰囲気で、暗闇を恐れ、友好的にポールに握手を求めてきた。そして殺害された姉妹について謎の話をポールに語り掛けてきた。
ポールはジョン・コーフィ死刑囚の罪状に関しての書類を読み始めた。
それぞれのグリーンマイルとは…。
◆予告編(YouTube)
◆インターネットで鑑賞(amazon prime video)
◆ディスクで鑑賞(Blu-ray)
※ディスクではDVDもあります。
「グリーンマイル」は死ぬまでの人生の不条理!~生まれたことを謝る~
THE GREEN MILEとは刑務所での死刑執行に向かう道。不条理を抱く死への廊下のことです。
重たいテーマだけを取り上げた訳ではありませんが、本来、人間とは誰かを助けることによって喜びを見出していける社会性ではないかと考えます。刑務所の看守が死刑囚に対して感情を持ち合わせてはいけない。しかし、人と人とがお互いを理解していく気持ち、人への優しさ、人を信じる心の繋がりなど絶対に無くしてはいけない感情も描かれています。
もしも人生が友達もいない孤独で辛い一人旅だったとしたら、自分のことは誰一人として認めてくれない世界にいたら何を考えるのだろう。生きていくのに疲れてしまわないだろうか。死にたいと思わないだろうか。それが間違いに拠る不条理な死の選択だったとしても。
自分自身が誰かにとって優しくて役に立つ存在でも世界の惨状や人間の冷酷さを感じてしまうと生きる気力さえ奪われてしまう不条理も見事に描いた物語だと言えます。
ここまで不条理という言葉を使ってきたので、この物語に対して不条理という言葉が正しいのか、それとも理不尽という言葉の方が正しいのか、意味の違いについても調べてみました。
不条理とは「自らの意志では避けられないという意味合い」
理不尽とは「望まないことを他人に押し付けられるという意味合い」
辞書的な意味から哲学的な人生観に展開すると分かり易いかもしれません。
不条理とは現実と自分。自分が思い描く理想からは、あまりにもかけ離れた現実を目にして不安を抱く感情、自分だけでは解決が出来ない問題。そして作家のアルベール・カミュは不条理を受け入れることが生き続ける唯一の方法としています。
私たちは常に現実と理想の狭間で、悩み、考え、行い、葛藤の中で何が正解なのか分からない状態なのかもしれません。雨の中の孤独な一羽のスズメの様な存在。それでも生きていくことを選択しなければいけません。
この物語には、やはり不条理という言葉の方が当てはまります。
不条理なき世界で、出来ることならば「生まれたことを謝る」のではなく、「生まれたことを喜ぶ」と思い続けたい。
しかし、長寿でいることが全ての幸福とは限らない、逆に長寿になったことが辛く悲しい不条理なTHE GREEN MILEを歩んでいるのだと訴えかけている様に感じられる映画でした。
アルベール・カミュは、1913年に生まれ1960年に46歳の若さで亡くなった。代表作として『異邦人』、『ペスト』などの小説、戯曲の『カリギュラ』、エッセイの『シーシュポスの神話』などがある。ノーベル文学賞も受賞したことがある不条理の哲学を打ち立てたフランスの小説家。
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「グリーンマイル」の補足情報
【音楽】~アカデミー賞・作曲賞ノミネート15作品~
トーマス・ニューマン(Thomas Newman)
この映画の作曲はアカデミー賞ノミネート回数が15回もあるトーマス・ニューマンが担当しています。残念ながら過去15作品ではアカデミー賞はノミネートまでで受賞には至っていないが、「アメリカン・ビューティー」などでグラミー賞は受賞している作曲家です。
第67回アカデミー賞・作曲賞(1995年)
「若草物語」ノミネート
「ショーシャンクの空に」ノミネート
第68回アカデミー賞・作曲賞ミュージカル/コメディ部門(1996年)
「想い出の微笑」ノミネート
第72回アカデミー賞・作曲賞(2000年)
「アメリカン・ビューティー」ノミネート
第75回アカデミー賞・作曲賞(2003年)
「ロード・トゥ・パーディション」ノミネート
第76回アカデミー賞・作曲賞(2004年)
「ファインディング・ニモ」ノミネート
第77回アカデミー賞・作曲賞(2005年)
「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」ノミネート
第79回アカデミー賞・作曲賞(2007年)
「さらば、ベルリン」ノミネート
第81回アカデミー賞・作曲賞(2009年)
「ウォーリー」ノミネート
第81回アカデミー賞・歌曲賞(2009年)
「ダウン・トゥ・アース」ノミネート
第85回アカデミー賞・作曲賞(2013年)
「007 スカイフォール」ノミネート
第86回アカデミー賞・作曲賞(2014年)
「ウォルト・ディズニーの約束」ノミネート
第88回アカデミー賞・作曲賞(2016年)
「ブリッジ・オブ・スパイ」ノミネート
第89回アカデミー賞・作曲賞(2017年)
「パッセンジャー」ノミネート
第92回アカデミー賞・作曲賞(2020年)
「1917 命をかけた伝令」ノミネート
【受賞歴】~マイケル・クラーク・ダンカンの泣きの演技~
-海外-
第72回アカデミー賞(2000年)
作品賞ノミネート
助演男優賞ノミネート:マイケル・クラーク・ダンカン
脚色賞ノミネート:フランク・ダラボン
音響賞ノミネート
第57回ゴールデングローブ賞(2000年)
助演男優賞ノミネート:マイケル・クラーク・ダンカン
-国内-
第24回日本アカデミー賞(2001年)
外国作品賞ノミネート
【映画と演劇】~物語は物語へと拡がる~
「グリーンマイル」
2017年にNEWS(ジャニーズ事務所)の加藤シゲアキ主演で舞台化もされました。映画の全米公開が1999年だったので、18年が経ったときにも色褪せない物語として残っていると考えると感慨深いです。
「トップ・ハット」
「グリーンマイル」で映画内映画として描かれた「トップ・ハット」は、1935年に公開されたアメリカのミュージカル映画。フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースの共演。第8回アカデミー賞(1936年)にて作品賞、歌曲賞、美術監督賞、ダンス監督賞にノミネートした。アメリカ国立フィルム登録簿にも登録されている色褪せない名作です。
◆ディスクで鑑賞(Blu-ray)
※DVDもあります。
「トップ・ハット」の劇中歌の“Cheek to Cheek”は数々のアーティストにカバーされています。トニー・ベネットとレディー・ガガの“Cheek to Cheek”は秀逸です。
※通常盤CD、レコード盤、ストリーミングもあります。
国内では有村架純と高良健吾の主演でのテレビドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」のエンディング曲「明日への手紙」がヒットした手嶌葵が“Cheek to Cheek”をカバーしています。平井堅とのディエット・バーションも収録されています。
※通常盤CDとストリーミングもあります。
◆ディスクで鑑賞(Blu-ray)
※DVDもあります。
「トップ・ハット」は日本でも舞台化されています。
1つ目は2015年に宝塚歌劇団の公演。
◆ディスクで鑑賞(DVD)
2つ目は2018年にV6(ジャニーズ事務所)の坂本昌行と多部未華子の共演。
【日本における冤罪事件】~飯塚事件~
1992年、福岡県飯塚市で幼女2人が強姦殺人された事件。容疑者の自白や物的証拠が無いまま死刑判決が確定。その僅か2年後に死刑執行がされてしまった。類似の冤罪事件とされる足利事件でDNA再鑑定が行われるとの報道がされた12日後に飯塚事件の容疑者の死刑執行がなされた。
もしも、これが国家、警察、検察、裁判所による隠蔽工作なら死刑制度については確固たる証拠が無い事件では中止にすべきだ。
法治国家において冤罪による死刑執行などあってはならない。
映画ではないのだから…。
「グリーンマイル」のネタバレ
ネタバレを含みますのでご注意ください。
3時間以上に及ぶ長編映画で、舞台設定は死刑囚を収監する刑務所、当然のことながら電気椅子に拠る死刑執行などグロテスクなシーンも描かれています。そこにファンタジーの要素が盛り込まれている物語になるので本当に観た皆様の意見が分かれても不思議ではない映画だと思いました。
死刑囚のジョン・コーフィは、ポールの尿路感染症を治し、パーシーに踏み殺されたネズミのミスター・ジングルスを生き返らせ、ハル所長の妻・メリンダが患っていた脳腫瘍をも治してしまう。そして人の過去を読み取る能力も持っているジョン・コーフィは自分に容疑がかけられている幼い姉妹に対する強姦殺人はウィリアム・ウォートンが真犯人だったと知ってしまう。その事はポールにも伝えた。ジョン・コーフィは殺された幼い姉妹を助けたかっただけだった。ジョン・コーフィはメリンダを救ったときに吸い込んだ邪気をパーシーに移す。パーシーは気が狂いウィリアム・ウォートンを射殺しパーシー自身も精神病院へと送られることになってしまう。
ポールは死刑執行前日にジョン・コーフィに逃げる様に伝える。しかし、ジョン・コーフィは生きていたくないと死を選ぶ。
そして、死刑執行人・ポールはジョン・コーフィの死刑を執行した。
ポールは老人ホームで、ネズミのミスター・ジングルスは廃屋で、ジョン・コーフィから受けた不思議な力によるものなのか長生きをしている。それはまるで無実の人を殺した罪を償い死ぬことが許されない様に。
映画内映画として描かれた「トップ・ハット」はハッピーエンドの物語です。誰でもが、それが死刑囚であったとしても人生におけるハッピーエンドを望むものだと信じています。
そんな感想を言える物語でした。
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※原作は新潮文庫で全6巻、小学館文庫では上下巻で出版されています。
原作:スティーブン・キング
監督・脚本:フランク・ダラボン
©1999 CR FILMS, LLC
※全ての画像は上記企業および引用元に帰属しています。
ここまで読んで頂き有難う御座いました。
素敵な映画時間を、お過ごし下さい。